よくわかる在留資格「介護ビザ」まとめ

2017年の9月から施行された在留資格「介護ビザ」への関心が高まっていますが、具体的にどのような制度なのか気になる人は多いでしょう。

日本の介護業界は少子高齢化の波を受けて、慢性的な人材不足に陥っています。そこで、政府は人材不足解消のひとつの対策として、就労ビザのひとつ「介護ビザ」を新設しました。これまで日本の介護施設で働ける外国人はとても限られていましたが、介護ビザの新設で外国人も働きやすくなったのです。

とは言っても、誰もが介護ビザを取得でき、介護施設で働けるわけではありません。今回は外国人が日本に滞在するために欠かせない「在留資格」と合わせて、日本で介護職員として働く外国人の入国審査で欠かせない「介護ビザ」について、詳しく紹介していきますね。

在留資格って何?

外国人が日本に滞在し働く場合に「ビザ」が必要だという話はよく耳にします。しかし、細かく言うとこれは間違いであり、外国人の日本への滞在を許可しているのは、「在留資格」です。介護ビザの説明にも関わってくるので、まずは在留資格について説明しましょう。

在留資格の概要

「外国人が日本に来る」というのは、外国人が日本に「入国」し、「在留(滞在)」するということです。なんとなくビザがあれば入国も在留もできるイメージがありますが、実際には次のようにそれぞれ必要となるものが異なります!

・入国→ビザ
・在留→在留資格

外国人が日本へ入国する場合は、最初に外国の日本の大使館・領事館に「日本に入国しても問題ない人」だと認めてもらう必要があります。大使館・領事館からOKが出れば、パスポートにビザ(押印、もしくはシール)を押してもらえます。

ビザを押してもらった外国人がパスポートを空港や港で提示して、上陸審査を受けて問題がなければ日本へ入国できます。しかし、ビザは外国人の「入国」のみを許可するもので、在留までは許可していません!

そこで、上陸審査を通過した際にビザに記載された内容に基づいて「在留資格」が認められます。在留資格を持つことで日本に在留することができ、なおかつビザに基づいて許可された範囲であれば、日本で仕事も行えるようになるのです。

外国人が日本へ来るときは、外国の大使館・領事館で発給されたビザを使って入国し、入国許可が下りれば「ビザ」が「在留資格」へと切り替わり在留を許可する証明となると考えると分かりやすいですね。

在留資格の種類によって日本への在留が許可される期間が決まっており、この期間を過ぎても日本に在留していると違法となります。強制送還、懲役、罰金といったペナルティがあるため、期間を過ぎても日本へ在留したいときは、事前に更新する必要があります。

在留資格の種類

外国人が日本へ滞在するには必ず在留資格が必要ですが、実は在留資格にもいくつか種類があります。そして、種類に応じて日本で行える具体的な活動も変わってきます。

数多くある在留資格ですが、許可される活動内容で大きく次のように分類されます。

就労系…決められた範囲での就労が認められる在留資格
身分系…就労制限の存在しない在留資格
留学系…勉学を学校で行うことを認められる在留資格
短期滞在系…日本の観光や親族への訪問を認められる在留資格
技能系…技能実習生が就労を認められる在留資格

ビザの細かい種類を確認したいなら、こちらを参考にしてくださいね。

参考 入国管理局 在留資格一覧表
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.pdf

例えば、身分系の在留資格を持っていれば日本に住みながら、なんの制限も受けずに好きな仕事ができます。しかし、短期滞在系の在留資格では就労が認められないので、日本で仕事はできないわけです。

日本でなんらかの仕事をする場合は、就労系身分系技能系のいずれかの在留資格が必要になるのですね。ただし、留学系の在留資格の場合でも、「資格外活動許可」の申請を受ければアルバイトが可能です。

「介護ビザ」とは

介護ビザとは、外国籍の人が日本で介護職員として働くことを許可する就労ビザのひとつです。日本の介護業界は慢性的な人不足となっており、ひとつの改善策として介護ビザが新設されました。

介護ビザの概要

日本では今までも外国人が介護施設で働くことはありましたが、働ける人は次のような人に限られていました。

・日本の永住者、日本人の配偶者など、就労制限の存在しない身分系の在留資格を持つ人

・留学や家族滞在の在留資格を持ち、資格外活動許可を認められている人(週に28時間以内のアルバイト限定)

・フィリピン人、インドネシア人、ベトナム人で「特定活動」の在留資格を持つ人

このことから、介護施設で働ける外国人は非常に少なかったことが分かります。日本は少子高齢化が進み、介護業界は慢性的な人不足に陥ってしまいました。そこで、政府は2017年9月より外国人が介護福祉士として働けるように「介護ビザ」を新設したのです。

この介護ビザを取得して入国すれば「介護」の在留資格を認められ、上の3つの条件に当てはまらない人でも、日本で介護福祉士として働けます。

介護ビザ取得の要件

介護ビザで入国し「介護」の在留資格を認められれば、晴れて介護福祉として日本で働けます。しかし、介護ビザは誰でも取得できるものではありません。介護ビザを取得するためには、次の4つの要件を満たしている必要があるのです!

1.介護福祉士(国家資格)の資格を持っていること
2.日本の介護施設との雇用契約があること
3.職務内容が「介護」もしくは「介護の指導」であること
4.日本人が同じ仕事に従事した場合と同等額以上の報酬を受け取ること

2番目の要件は文章どおり、日本の介護施設と雇用契約を結ばないといけないということです。そして、介護施設と雇用契約を結べば基本的に職務内容は介護となるので、普通なら3番目の要件も問題なくクリアとなります。

4番目の要件は、外国人を雇う施設側がクリアするべきものですね。介護ビザを含んだ「就労ビザ」では、日本人が従事する場合と同等額以上の給与を出すように要件が定められているのです。

これで、2~4番目の要件はクリアとなりますが、問題は1番目の「介護福祉士の資格を持っていること」ですね。すでに日本で介護福祉士の資格を取得している外国人ならば、2~4の要件を満たせば介護ビザを取得でき、日本へ入国後に介護の在留資格を認められ、介護の仕事ができます。

しかし、日本で介護福祉士の資格を取得していない外国人は、その時点で介護ビザで入国し、介護の在留資格で日本へ滞在するのは不可能なのです。しかし、将来的に「介護ビザ」を取得することは可能です。

介護ビザ取得のために行うこと

介護福祉士の資格を取得していない外国人が、介護ビザを取得するまでの方法を紹介しましょう。

①情報源を知る

在留資格、介護ビザについて説明してきましたが、ここでの説明はあくまで簡単なものです。本来は細かい取り決めがあるため、将来的な介護ビザを取得するなら正確な情報を得なければいけません。

情報源となるサイトを紹介しましょう。

・厚生労働省 介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格「介護」の創設について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150881.html
こちらは、厚生労働省が在留資格「介護」に関する情報を掲載しているサイトです。

以下のページのように相談窓口も用意されています。

介護福祉士を目指す外国人留学生のための相談窓口
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000350315.pdf

電話での相談は、英語・中国語・ベトナム語に対応しているので外国人の方でも安心して相談できる環境が整えられています。

②介護福祉士資格の取得を目指す

介護福祉士の資格を取得するまでの、簡単な流れを説明しましょう。実は介護ビザを取得するためには、ただ介護福祉士の資格を取得するのではなく、「養成施設ルート(専門学校等)」で資格を取得しないといけません!

そのため、資格取得までの流れは次のようになります。

①外国人留学生として入国
②介護福祉養成施設で2年以上学ぶ
③介護福祉士の国家資格取得

介護福祉士の資格を取得していない外国人は、「介護」の在留資格で日本への滞在はできません。しかし、①~③の期間は「留学」の在留資格を使い介護福祉養成施設に通えば、介護福祉士の国家資格が取得可能となります!

国家資格を取得した後は、「介護ビザ取得の要件」で紹介した残りの3つの要件をクリアすることで、在留資格を「留学」から「介護」へと変更でき、介護福祉士として日本の介護施設で働けるようになります。

③介護ビザに関する経過措置

介護ビザは新設されたばかりであり、最も重要な要件である介護福祉士の資格取得について、経過措置が存在します。養成施設を卒業する年度によって、資格の取得方法が変化するのです。具体的に説明しましょう。

・平成29年度~平成33年度までに介護福祉士養成施設を卒業した場合
卒業後、介護福祉試験に合格できなかった場合でも、試験センターへ登録申請することで、5年間の有効期限付きの介護福祉士の登録が可能です。

試験に不合格でも、5年の間は介護福祉士の資格を与えてもらえるわけですね。もちろん、この資格があることで介護ビザを取得できます。

そして、卒業年度の翌年度の4月1日から5年間継続して規定された介護等の業務に従事すれば、届け出を出すことで5年目以降も介護福祉士の資格が有効となります。

少し複雑になってしまいましたね。ざっくりいうと、国家試験に不合格でも「介護福祉士(5年の期限付き)」の資格を取得でき、介護ビザも取得可能。5年介護の仕事を続ければ、「介護福祉士(期限なし)」の資格を取得できるということですね。

・平成34年以降に介護福祉養成施設を卒業した場合
平成34年以降は、試験に不合格になった場合の「5年間の有効期限付きの介護福祉士の登録」という制度は利用できません。さらに、5年間継続して介護の仕事に従事しても、介護福祉士には登録できません。

つまり、平成34年以降に卒業する場合は、しっかりと国家試験に合格しなければ介護福祉士の資格取得ができないのです!試験は日本語で出題されるため、外国人の方が合格するのは決して簡単なことではないでしょう。

まとめ

いかがでしたか?
外国人の方が日本へ入国するには「ビザ」、滞在するには「在留資格」が必要です。さらに、日本で介護の仕事をするには「介護ビザ」の取得が不可欠で、介護福祉士の国家資格も必要です。

介護ビザの新設によって、外国人が日本の介護施設で働ける可能性がぐっと高まります。この動きによって、慢性的な人材不足の日本の介護業界のあり方も変わるかもしれませんね。雇用する側、雇用される側、どちらも介護ビザへの理解をしっかりと深めておきましょう。

最初のコメントをしよう

必須

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください