「AI」×「介護」AI導入によるメリットと今後の課題

様々な分野でAI(人工知能)の活用が話題になっていますが、現在介護業界でもAIやICTの導入が真剣に検討されています。
特に、AIを活用した介護ロボットの導入は介護業界の労働者不足を解決する一つの手段として期待されています。

また、こうした技術の活用により利用者や介護従事者の身体的、精神的負担を軽減できるため、AIの導入は介護の現場にとって大きなメリットがあります。

この記事では、まずAIやICTといった言葉について調べ、その後AIがもたらすメリットやAIの活用例などについても調べていきたいと思います。

ICTとAIの違い

AIとICTといった言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。
同じ文脈で語られることの多いこの二つの言葉の違いについて、まず考えてみましょう。

AI(人工知能)

AIとは「人工知能」のことです。
これは、単なる機械ではなく、人間の神経回路を模倣して作られた頭脳を持ったコンピューターのことです。

人間を真似た意志決定能力を持つAIを活用したロボットやシステムが、人間に替わって作業や仕事を行うことが期待されています。
特に介護ロボットや見守りロボットなどの分野では、緊急時に人間が関わらずAIが判断し、ヘルパーや利用者の動きサポートできるよう開発が進められています。

ICT(情報通信技術)

一方、ICTとは「情報通信技術」のことで、スマホやコンピューターなどのツール全般を指します。

これまでよく使われてきた「IT」に替わる言葉で、間に「C(通信,伝達)」の文字が入ります。
スマホやパソコンもネットワーク(通信環境)につながることで活用の範囲は広がります。
今やネットワークにつながらないコンピューターはないと言えるくらいITと通信技術は切っても切れない関係にあります。
それで、ICT(情報通信)という言葉のほうが現在の状況に合っているのです。

介護業界は特に他の業界に比べてもこのICT化がかなり遅れている状況です。
例えば、介護現場ではまだまだ記録類は手書きなどが多く、記録の入力作業にタブレットなどが活用されている事例はまだ少ないようです。

こうした状況を改善するため、現在政府により介護に関わる情報のICT化、データベース化が進められています。

AI導入によるメリット

では、AIを導入することで介護業界にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下のようなメリットがあります。
1、介護業務の効率化
2、介護スタッフの身体的負担の軽減
3、利用者の負担軽減

介護業務の効率化

AIを導入することで以下のような仕事の負担が軽減されます。
・利用者の見守り
・利用者のメンタルケア、コミュニケーションのサポート
・ケアプランの策定

利用者の見守り

利用者の見守りに活用されるのが、画像解析AIです。
こうしたAIを活用することで、利用者の見守りが24時間可能になります。

利用者のメンタルケア、コミュニケーションのサポート

利用者のメンタルケアやコミュニケーションのサポートには、自然言語処理AIが活用されます。
AIを活用した音声アシストが開発されており、家族やヘルパーに替わり利用者のリクエストにこたえ、対話できるロボットの開発も進められています。

ケアプランの策定

また、情報解析AIにより、ケアマネージャーによるケアプランの策定などの仕事の軽減も期待されています。

介護スタッフの身体的負担の軽減

AIを活用した介護ロボットにより、介護業務そのものの負担を軽減できます。

介護には、利用者をベッドから車いすや便座まで移乗したり、体位交換をしたりと人手で利用者の体にかかわる仕事が数多くあります。
さらに、食事、着替え、排せつなどヘルパーが日々こなす仕事は無限にあります。

高齢化により介護に従事する労働者の数そのものが減少しており、介護従事者一人にかかる負担は年々増大している状況です。
AI(人工知能)を活用した介護ロボットの活用により、介護従事者の体に負担をかけやすい仕事をロボットに代わってもらえ、機械的な作業はロボットにまかせられます。

利用者の負担軽減

利用者が、着替えや排泄、入浴などこれまで自分で行っていたことを、家族やヘルパーに助けてもらうことに、「恥ずかしい」とか「申し訳ない」という気持ちがあるのは当然ですよね。
こうした気持ちは、利用者にとっても心理的な負担になります。

介護ロボットなどを活用することで、利用者がロボットやマシンの力を借りて自分で自分のことを行えます。
技術を活用することで、利用者の感情的なニーズにも応えられるのです。

介護現場でのAI活用事例

では、現在どのようなAI活用事例があるのでしょうか。

AIを活用した介護ロボットは3つの種類に分かれています。
1、介護支援型
2、自立支援型
3、コミュニケーション・セキュリティー型

介護支援型

介護支援型とは、利用者の移乗、入浴、排泄介助など、介護業務の支援をするロボットです。
ベッドが車椅子に変身する介護ベッドなどはその例で、要介護者の介護負担を軽減できます。

自立支援型

自立支援型とは、歩行支援、リハビリ、食事や読書など、利用者の自立を支援するロボットです。
食事介助を支援するロボット、などはその例です。
そうしたロボットの活用により、利用者が一人でできることが増え、家族やヘルパーは利用者につきっきりにならず、別の仕事を行えます。

コミュニケーション・セキュリティー型

利用者とおしゃべりするロボットや、就寝時などの見守りを行うロボットのことです。
一人暮らしのお年寄りと気軽に話せるロボットを開発することで、高齢者のメンタルヘルスに役立ちます。
さらに、ロボット技術を用いた見守り支援ロボットの開発により、ヘルパーや家族により利用者を24時間見守り、急変時にもすぐに対応できます。

介護現場でのAI活用に向けた政府の方針

政府による介護AI活用の方針は、2017年6月に策定された「未来投資戦略2017」にまとめられています。

この方針では、介護や医療分野で、情報を一元的にまとめて管理できるプラットフォームを整備することが盛り込まれました。
こうしたプラットフォームやデータベース化により、利用者や介護従事者の仕事を軽減できます。
特に、利用者にとっても最適な健康管理や予防、ケアを受けられる体制づくりが進められています。

AIによるケアプランの作成

政府が現在進めている介護情報データベースとAIを活用し、ケアプランの作成を自動化できないかと検討されています。

現在、ケアプランはケアマネージャーが一人一人の身体、家族、メンタルの状況などを聞き取り、ケアプランに落とし込んでいきます。
この作業には多くの時間がかかるため、AIの活用によりケアプラン作成に関する多くの作業を自動化し、ケアマネージャーの作業負担を減らしていくことが検討されています。

今後の課題

今後の問題点としては、以下のような点が上げられます。
・介護ロボットはまだ高価
・介護ロボットの使用に慣れるのに時間が必要
・開発されたロボットが現場のニーズに合わない

さらに、見守り支援ロボットに関するプライバシーの問題や、「ロボットに介護してもらいたくない」という利用者の意向とのギャップなど他にも様々な課題の克服が残されています。

まとめ

まだまだアナログな作業が多い介護業界でも、ここ数年やっと政府の後押しによりICT化やAIの活用が進められています。

ただ、高度な技術を持つロボットやAIも人間の道具には変わりなく、完全に人間の替わりを務めるのはまだまだ難しいでしょう。

AIやICT技術の活用により、機械的で負担の多い作業をロボットに任せ、介護従事者や利用者がより人間らしい仕事や趣味に一層携われるような未来が、早く来ればいいですね。

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