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[育児と介護] ダブルケアとは?問題点と対策について…

まだ日本では一般的な認知度の低いダブルケアですが、離職や経済的な負担といった悩みを一人で抱え込んでいませんか。

介護と育児を同時に行う精神的にも過酷なときだからこそ、少しでもそういった状況を改善する情報や知識は大切です。

「ダブルケアって何?」といった初歩的な説明から、ダブルケアの現状や背景、各地方自治体での取り組みについてもご紹介します。

 

そして今後の課題や、ダブルケアに関しての制度やサポートについても分かり易くご説明します。

そもそもダブルケアとは?

昨今の高齢化により介護離職などが社会問題となっていますが、その中でも最も過酷なのがダブルケアだといわれています。

ダブルケアというのは、子育てなどの育児と親の介護を同時に担うことをいいます。

ダブルケアは、2012年に横浜国立大学大学院の相馬尚子准教授が生み出した言葉で、 晩婚化、出産年齢の高齢化、少子高齢化などが集中して顕在化したものともいわれています。子育てと親族の介護を同時に行うため、心身共に疲弊していきますが、ダブルケアをしている人は現在では全国で25万人にのぼります。

これまでは介護と仕事の両立や、仕事と子育ての両立が社会問題として官民一体となり解決への糸口を探していましたが、今後は仕事・子育て・介護という三つを同時進行で行う世帯も増加傾向にあります。

ダブルケアの現状と背景

介護や育児のそれぞれどちらかを行うだけでも、時間の融通がきかなくなりますが、ダブルケアになればより一層その状況に拍車がかかります。女性の社会進出に伴う晩婚化や出産年齢の高齢化も、そうした背景にあり、介護と育児が同じ時期にかさなることで、ダブルケアによって離職するケースも増加しています。

 

少子化の影響で兄弟姉妹が少なくなり、介護の分担をしようにもできないといったことから、女性の3人に1人、男性では4人に1人がダブルケアによって離職しています。日本で一番人口が多い世代である、団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は、その子供にあたる世代がダブルケアを経験するといわれています。

 

そのため2025年以降には、今以上に労働人口の減少まで危惧されており、ダブルケアに対する対策の推進が急務となっています。

ダブルケアの問題点

ダブルケアの問題点については、様々ありますが、大きく分けて三つあります。

2016年に発表された内閣府の調査では、ダブルケアをする人は全国で約25万3千人、そのうち女性が16万8千人、男性が8万5千人となり、圧倒的に女性への負担が大きくなっています。「育児や介護は女性の仕事」という考えや価値観がまだ日本では根強いため、ダブルケアによる離職も女性の方が多いという現実があります。

問題点の一つ目として、女性への負担だけ突出していることが挙げられます。

次に経済的な負担もダブルケアでは重くのしかかってきます。育児費用や介護費用が両方で必要になってきますが、時間に融通がきかないために離職する人が多く、経済的な困窮に繋がる悪循環に陥っています。

ダブルケアでの育児費用と介護費用にかかる費用は、一世帯で月8万円以上と言われていますが、離職していて貯蓄や資産を削りながらの支出になるなど、経済的な負担が重くのしかかっています。

そして、ダブルケアはまだ一般的な認知度も低いため、経験者や相談できる機関が少なく、悩みを共有できる人がいないために精神的に孤立して追い詰められていくことも多々あります。専門家のアドバイスを受けることができる場もなく、ダブルケアでの同じ悩みを持つ人とつながれる場を官民一体となり、創出していくことが課題とも言えます。

また仕事をしながらの両立を図ろうとすると、介護の場合には施設の入居費用や、月々の利用料なども掛かってきますので、その分だけ育児や普段の生活費を削るなど、子供への影響も懸念されています。
ダブルケアでの介護費用がかさむことで、高校や大学への進学を諦めて進路の選択にも影響してきます。

ダブルケアに対する制度は?

続いてダブルケアについての制度についてですが、ダブルケアをしている家庭を支援する制度や行政の仕組みは、現状ではまだ整備されていません。そういった理由から、ダブルケアになってから貧困家庭になるなどの問題も続出してきています。

 

一部地域では、その地域限定ではありますが、施策や小規模な活動が行われてもいますが、全国的な広がりにまでは発展していません。一億層活躍や女性活躍と国全体での高齢者や女性を労働市場に流入する動きが近年では活発化していますが、ダブルケアという介護と育児の両面での負担は女性に全て掛かり、制度の見直しや整備は一切されていないのが現状です。

 

そういった制度の整備がされていないため、個々で介護の際には在宅介護サービスを利用したり、デイサービス(通所介護)やショートステイなどを利用するなどの自己負担になっています。ダブルケア自体の制度ではありませんが、相談窓口として、育児なら「子育て世代包括支援センター」、介護なら「地域包括支援センター」はありますので、総合的な相談に応じてくれる、こういったサービスの利用をする以外の手立てはありません。

ダブルケアの対策とサポート

地域別では、大阪府堺市では市内7カ所の区役所で、ダブルケアの相談窓口が設置され、育児や介護の研修を受けた社会福祉士などが、窓口での相談に乗るなどの施策が始まっています。ダブルケアに必要なサービスの案内や介護施設の紹介なども行っているようです。

 

香川県でもダブルケア世帯の当事者を集めて「ダブルケアカフェ」というイベントを開催して、当事者同士での悩みを話し合ったり、専門家からのアドバイスも受けることができるなどの取り組みをしています。当事者間の精神的な負担軽減を積極的に支援していくことを目指して、県全体で支援にあたっているようです。

 

同じく、京都府でも地域包括支援センターと子育て世代包括支援センターを連携させ、介護と育児問題を相談できる適切なサービス紹介を行える態勢の構築しています。

 

横浜市でもダブルケアのサポートプロジェクトとして、ダブルケア問題に関する相談に応じるカウンセラーの育成や、ダブルケア問題を抱えている世帯にハンドブックを配布するなどの取り組みを行っています。

 

ただ現状では、ダブルケアの介護と育児とを扱う行政機関の部署がそれぞれ分かれているため、非効率的で迅速な対応ができず、相談する側にも相談しにくい状況になっています。ダブルケア専用の相談窓口の設置が急務ではありますが、全国的にも支援体制が整っていないことは課題と言えそうです。

 

どこに相談をすればいいのか。どういう対策をとればいいのか。それらを明確にして行政側も広報で情報発信をしていくなど、ダブルケアの社会的な認知度を高める取り組みにも、現在もダブルケアで孤立している方々から期待が高まっています。ダブルケアという言葉自体がまだ一般的な認知度が低いため、各自治体の予算額も付けられないという事情もあります。

 

介護と育児が切り離されて考えられ、それらが一気に負担となっている状況を、一人でも多くの国民・市民に伝えることから、行政の協力体制の構築に繋がります。そのため、テレビや新聞などの各メディアでも、ダブルケアについて取り上げていくことも必要です。

 

メディアで取り上げられることにより、一人一人が当事者意識を持つことで、国の制度や地方自治体での取り組みや法整備にも進展していきます。現在進行形でダブルケアで孤立しながらも、懸命に奮闘している当事者の人が、一人でも多く気楽に悩みを打ち明けられるような体制や仕組みが必要です。

まとめ

いかがでしたか。ダブルケアは今後の日本が抱える大きな問題であり課題は山積みです。

しかし、一部地域ではすでにダブルケアについての様々な取り組みも始まっています。一人ひとりが当事者意識を持つことで、少しづつでも改善していけるように考えていくことが大切です。