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介護の「キャリア段位制度」って何?

皆さんは2012年から導入された介護の「キャリア段位制度」をご存知ですか?
「キャリア段位制度」とは、簡単に言えば、これは「介護者の職業能力レベルの評価、認定制度」のことです。

この制度にはどんな目的があるのでしょうか。
まず介護従事者は自分のレベルを客観的に理解し、介護技術の向上を意識するようになります。
また介護サービスを利用する側も、介護者のレベルを知り、良質の介護を選び、安心して介護を受けられます。

では、より具体的に「キャリア段位制度」について考えていきましょう。
この制度が制定された背景、またメリットだけなくデメリットについても理解していきましょう。

そもそも「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」って何?

「キャリア段位制度」の正式名称は「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」です。

内閣庁が定めた定義によると「キャリア段位制度とは成長分野における新しい職業能力を評価する仕組み」となっています。
つまり、企業や事務所ごとにバラバラではない共通のものさしをつくり、これに基づいて人材育成することをめざしています。
キャリア段階はエントリーレベルの1段階からトッププロフェッショナルの7段階までで、各事業所内の「アセッサー」が事業所内部でのレベルの評価をします。

実際、これまでは一度ホームヘルパーや介護福祉士の資格を有しているなら、各自の実質や能力を客観的に計る共通の基準はなく、経験や技術に関する評価も「個人的な感想や観察」程度にすぎませんでした。
しかし、この制度が導入されることにより、介護の知識に加え介護技術や能力が段階的に評価、認定されます。

また介護者一人ひとりが自分のレベルを客観的に分析し、どうすればキャリアアップできるのかを考え、高いモチベーションを保てます。

「キャリア段位制度」が設けられた理由とは?

では「キャリア段位制度」が設けられた理由は何でしょうか?
この制度はなぜ必要になったのでしょうか?

「キャリア段位制度」という共通のものさしができることで、施設や企業、事業所で働く介護士の待遇や仕事の質を全体的に一定のレベルに引き上げられます。
また、この制度が導入されたことにより、働く側のモチベーションが上がり意識的に介護技術を向上させていこうと考えていきます。
また、介護を受ける側や、家族の介護サービスを検討している場合にも、介護者のレベルを参考に安心して委託できます。

介護のお仕事は体力を要するお仕事ですが、その待遇や給与への満足度が低く離職率が高いというのも現実です。
「キャリア段位制度」により、介護従事者が引き続き介護の仕事に継続してとどまり、自分の技術を向上させていくことに思いが向くようになるのです。

さらに、介護のお仕事にはコミュニケーション能力も欠かせません。
いくら介護の知識があっても、利用者様やそのご家族、他のスタッフなどとうまく接することができなければ介護のお仕事を継続させることが難しくなるでしょう。
「キャリア段位制度」には、この「家族や利用者とのコミュニケーション」も評価基準の一つなのです。

このように介護教育を通じて介護者が様々な面での能力向上をはかり、「介護のプロフェッショナル」として仕事に対する誇りや向上心を養い、定職率を高める結果にもつながります。

「キャリア段位制度」で、施設や事業所は何が変わるの?

では、「キャリア段位制度」が導入されたことにより、施設や事業所はどんな点が変わるのでしょうか?

キャリア段位を持つスタッフが施設や事業所に増えるとそれだけ信頼度も高くなり、他の施設との差別化を図れます。また常に目標を持ち、改善点にも真摯に取り組むようスタッフの意識改革にもつながります。

このようなことを施設や事業所が理解しているなら、離職者も減り、常に高いプロ意識を持ったスタッフを従事させられるため、双方にとって働きやすい職場になることでしょう。

この制度のために施設や事業所がしなければならないことも増えます。
施設や事業所内のスタッフの中から実践スキルなどの評価する人材「アセッサー」を選び、そのスタッフに「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」のアセッサー講習を受講させる必要があります。
この「アセッサー」の評価に基づき、施設や事務所の介護スタッフに「キャリア段位」が評価されます。

アセッサーって何?

では、「アセッサー」とは具体的にどういう仕事をするのか考えていきましょう。

これは施設や事業所内で各介護スタッフのキャリアアップを推進、支援、評価する役割を担当する人材のことを指します。

そのため、「アセッサー」はみんなからの信頼も厚く、施設内の介護スタッフを管理する立場にある人がふさわしいと言えます。
また、介護の知識、経験、実績が豊富で、リーダーシップと判断力があり、かつ正しく公正に評価できる人でなければなりません。

さらに、国で定めた「キャリア段位制度」の評価基準に基づいて、施設・事業所内の介護スタッフの介護技術の評価や介護現場のスキルアップの支援(OJT)を通じて「分からない、やっていない、できない」から「わかる、できる」になるよう指導、育成していくための役割も担える人材でなければなりません。

アセッサーになるには?

では、どうすればアセッサーになれるのでしょうか。

介護福祉士として一定の実務経験があり、レベルは先ほどの全7段階ある「キャリア段位制度」のうちレベル4以上、そしてアセッサーを担う能力があると認められたなら、アセッサー講習を受講できます。

この講座は事務所や自宅でできるテキスト学習、eラーニング学習、トライアル課程実施、また受講期間内に一日講習開場に来て、集合講習を受講することが求められています。

テキスト学習、eラーニング学習、トライアル課程実施はアセッサー受講期間である六週間以内に学習し終える必要があります。

修了条件は上記にある全ての学習、講習を履行し、確認テストを合格、登録することによってアセッサーとして活躍できるようになります。

またこのアセッサー講習は各都道府県によって随時受講できるようになっています。
さらに都道府県や自治体別に講習受講料に関する助成、補助金に取り組んでいるところもあります。うまく助成制度を活用してより多くの人がアセッサーとなって事業所や施設で活躍してほしいですね。

「レベル認定」とは?

「キャリア段位制度」のレベル認定とは、「実践的スキル(できる)」と「知識(わかる)」の両方から評価していきます。

「実践的スキル(できる)の評価」は、内部評価と外部評価があります。
まず施設や事業所で一定の条件を満たしたアセッサーにより介護スタッフの日頃の仕事の様子や業務記録などを見て内部的に評価します。

次にその評価が適切かどうかを第三者機関が評価することを外部評価といいます。
単に内部だけの評価ではなく、客観的で公正に行われるのです。

そして「知識(分かる)の評価」は原則として、介護福祉士養成課程、介護初任者研修等の講義を修了したことで、評価します。

「キャリア段位制度」のメリットは?

「キャリア段位制度」のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

まず介護スタッフにとっては、基本介護技術利用者視点地域包括ケアリーダーシップの4つの評価項目があり、できている点、できていない点が分析しやすく、改善点に取り組みやすくなります。

さらに、仕事へのモチベーションが上がり、仕事への意欲が向上します。
また、転職の際に評価された実践的スキルの評価結果を記載して求職活動に生かせます。

「キャリア段位制度」のデメリットは?

「キャリア段位制度」のデメリットにはどんなものがあるのでしょうか?

まず、レベル認定に費用がかかります。
各都道府県でレベル認定の助成金が補助されているので確認が必要です。
毎回レベル認定を受けるときやアセッサー講習を受講するときに費用がかかるのは最大のデメリットといえます。

さらに、アセッサー、段位認定を受ける人、施設や事業所すべての人にとって事務的な負担が大きいという点も挙げられます。

特にアセッサーが内部評価を行う場合、評価される人の介護評価について評価の根拠をすべて記載する必要があります。そのため膨大な時間が費やされることになります。
アセッサーとして評価するため、アセッサーは評価対象の介護スタッフと仕事を共にする必要があります。
ただでさえ人手不足の介護現場で、アセッサーがもともと担当していた仕事を他のスタッフが代わりに行う必要が生じるため、現場の負担が増えるという現実があります。

まとめ

いかがでしょうか。
「キャリア段位制度」について理解が深まりましたか?

「キャリア段位制度」導入によって介護の教育が見直され、介護スタッフのモチベーションが上がり、質の高い介護を提供できるようになります。
介護を受ける側にとっても安心、信頼のおける介護を委託できるようになります。

高齢化社会である現状から考えても介護従事者がプロとして自分の仕事に誇りを持ち、向上心を持って仕事を取り組めるよう、この制度が導入され発展していくことを期待しています。